PICK&UP No.48 税理士法人 平塚丸岡合同事務所 -石巻市-
はじまりは女川から
平塚善司会長の夢と希望
石巻市にある、昨年2023年に60周年を迎えた税理士法人平塚丸岡合同事務所の所長丸岡美穂さんに、創業者で父である故 平塚善司会長との思い出や創業当時のお話を伺いました。
前向きに明るく諦めない精神
昭和38年2月の創業から半世紀。税理士法人平塚丸岡合同事務所は平塚善司会長の生まれ故郷、女川町の自宅の一室から始まりました。
平塚会長は、昭和13年2月女川町にて出生。8人兄弟の6番目にして初めての男児の誕生ということで、家族は大喜びだったそうです。幼い頃から明るくて活発な性格でしたが戦時中で経済的に苦しく、子どもの頃は家の手伝いで、山奥で炭焼きの火が消えないように一晩見張りをしてこいと親に言われたり、肥を背負って運んだり、本当に恥ずかしくて誰にも見られたくなかったことなどを、長女である丸岡所長に思い出話をたくさんしてくれたそうです。その後、宮城県石巻高等学校へ入学。進学は、兄弟が多いこと、祖父が事業に失敗してしまった時期と重なったこともあり経済的なことを考え、大学へ行くことをあきらめ、経理の専門学校へ進学しました。
岡田劇場の奥様の一言が
ターニングポイントに
在学中に税理士という資格があることを知り、挑戦することに。
受験資格である日商簿記一級の試験に挑戦していましたが、なかなか合格に至らず祖父から「そろそろ諦めて就職しなさい」と言われていたある日、平塚会長の演劇部仲間と、オカダプランニング(岡田劇場)の菅原さん宅で飲み会をすることに。
平塚会長が「もう、日商簿記一級の受験はやめる。」と言ったところ、それを聞いた菅原さんのお母さんに「なんのために、今まで頑張ってきたの!それは間違ってるよ!」と喝をいれられ、思いとどまり再度挑戦することに。なんと結果は晴れて合格。
仕事をしながらの税理士試験の勉強では、眠い時は目の周りに虫刺されの薬を塗って必死に頑張ったというエピソードも。
昭和37年24歳の時、税理士試験に合格。平塚会長が「税理士試験に受かったからお給料を上げてください。」と会社にお願いしたところ「じゃあ辞めていいよ。」と言われ、昭和38年に女川の自宅の6畳間に税理士事務所を開業したのでした。顧問先は9社から始まりました。
「初めての顧問先は女川の墓石屋さんで、今もお客様なんですけど、いただいた顧問料を、父(善司さん)の両親が神棚にあげて拝んだそうです。当時は高度経済成長期で漁業が盛んで、父はお金をいただきながらお客さんからたくさん勉強させてもらったと言っていました。明るい性格で人に愛されて恵まれていたんですよね。」と丸岡さんから素敵なエピソードを聞かせていただきました。ほどなくして国民生活金融公庫から200万円の融資をうけ自宅の横に事務所を建設しました。
父・平塚会長が教えてくれた
「はたらく」ということ
女川町から事業をスタートし、お客様の税務や会計・開業のサポート、経営の相談事など地元の事業所のために奔走。石巻にお客様が増えたこともあり昭和48年石巻市に事務所を移転しました。
それから10年経ち、平塚会長の長女、丸岡所長は地元の宮城県石巻女子高等学校へ入学し将来の夢を考えはじめた頃。丸岡所長は海外の仕事をしてみたいという気持ちと、税理士の仕事をやってみたいという気持ちがありました。高校1年の時に父 平塚会長から「もし税理士になりたいなら中央大学を目指すといいよ。」と勧められ進学に向けて勉強をしたそうです。「父は、『大学も資格も受かってからが本番でありスタート!浪人はだめだ』という考えの人でした。父には幼い頃から、『一番でないとだめ、一番と二番では全然違うから一番を目指しなさい』と言われていました。」と笑顔で語る丸岡所長。〝一番になりなさい〟ではなく〝一番を目指しなさい〟という言葉に父から子への〝最大限に自分のベストを尽くすこと〟を教える激励の気持ちを感じました。父 平塚会長の教えの通り東京の中央大学 商学部 会計学科への合格を決め、税理士試験に合格。都内の株式会社KPMGピート・マーウィック(現 KPMG税理士法人)へ入社し、国際税務部門に所属。平成7年に地元女川へUターンし、父 平塚会長が経営する「平塚善司税理士事務所」へ入社しました。覚えることも多くて、当時は仕事をこなすので精一杯だったそう。「まだ若い私に、お客様はよく任せてくれたなと思います。東京と違い地元は関係性も近いので、やりがいがとてもありました。父が現役の頃によく言っていたのは『【はたらく】という言葉は(はた)を(楽)にすることだよ』と言われていました。(はた)は、よその人・他の人という意味で、自分以外を楽にしてあげられることが働くという事だと教えられました。自分がトップになってから、父が所長時代にネガティブなことを言っていた時の気持ちが分かるようになりました。」と丸岡所長は懐かしそうに教えてくださいました。
税理士を超えた
会社経営のパートナーとして
平塚会長は平成10年税理士功労により黄綬褒章を受章し、TKC東北会の会長として東北中を回り、石巻法人会の会長、宮城県法人会連合会の副会長を務めるなど、自社のみならず地域にも多くの貢献をされてきました。
平成26年に丸岡所長が税理士法人 平塚丸岡合同事務所 設立・代表社員に就任し、平塚会長の思いを引き継ぎ、お客様の状況を共に深く知り良い方へ導くべく邁進されています。
平塚会長は生前、会社の倒産や再建に携わる際に人の育成が大切だと分かり、日本創造経営協会で学んでいました。丸岡所長は、その平塚会長の思いと学びを受け継ぎお客様の会社経営が良い方へ向かう道標を作っています。
「私は子どもが3人いるのですが、独身時代や子どもがいなかったときと比べると視野も変わったり…。なのでうちの社員には、個性やライフステージに合わせて役割や期待する内容などを変化させるようにしています。」と丸岡所長。
思いを受け継ぐ
「石巻ハーベスト奨学金」
創業60年を記念し実施開始
この石巻ハーベスト奨学金は、同社が昨年(2023年)石巻管内の次世代を担う税理士・公認会計士等会計専門職の人材育成を図るため、また国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)のターゲット4「高い教育をみんなに」の達成に向けて、専修学校等における資格取得資金の一部を給付することで修学援助を行い、会計・税務業界に優秀な人材を輩出することを目的とし実施開始されました。
「しっかりと目標をもって頑張っている若い学生さんの足しに、少しでもなればと思っています。」と丸岡所長。平塚会長の青年時代の苦労と努力、税理士になられてから邁進する姿を見て共に歩んでこられた丸岡所長が地域への思いをもって発足した「石巻ハーベスト奨学金」のことが必要としている方に届きますように。詳しくは次回ご紹介します!
文・写真:上野恵美
税理士法人
平塚丸岡合同事務所
〒986-0806
宮城県石巻市開北1丁目8-45
TEL:0225-96-3880
FAX:0225-94-3104