PICK&UP No.47 社会福祉法人一視同仁会 -石巻市-
(全5回・第5回目)
“フレイル予防・介護予防運動”
石巻で地域を元気に!
~介護を必要としない体づくりのために~
近年、介護福祉施設で「フレイル」=〝要介護〟にならないようにと、運動の導入が注目されています。身体機能低下の始めの段階で、前向きに運動することで、介護の状態に進むことに歯止めをかけたり、良い状態に戻したりできると言われているそうです。社会福祉法人一視同仁会ではその取り組みに力を入れています。今回は、主に予防介護への取り組みについて同法人理事長の遠藤早苗さん(以下:遠藤理事長)にお話を伺いました。
利用者様を心から愛し
幸せと生きがいのための支援
地域に必要な最高の施設づくりを
機能訓練を大切にし、手足の動きなど今の状態が良い場合は、その現状を維持できるように、悪い場合はさらに健康で気持ちがイキイキと長生きできるようにサポートしています。
足を鍛えるマシーンや歩行訓練などの効果は目に見えて変化を感じるそうで、「立ち上がったり、歩く時に楽になったよ。とか、手が動かなくて不便だなぁと言っていた利用者さんが握ったりつまんだりの作業の動作ができるようになって喜んでくださったり、そのせいか意欲がどんどん湧いてきて明るくなって、こちらも嬉しくなります。」と遠藤理事長。
1日ほんの少しの活動で
意欲と体力の維持・改善!
花水木介護センターでは、午前中の活動時間には、マシーンを使った機能運動や体操、JAZZダンスやエアロビクス、ヨガ、歌唱、脳トレのような回想ゲーム、手芸、健康麻雀など様々なジャンルの先生を短時間勤務の職員として採用して、施設中央のホールで、専門の理学療法士が見守り指導を受けながら、利用者さんひとりひとりに適した可動域と時間で取り組んでいるそう。
外部から招かれた講師の方々は、アイデアをこらして毎回利用者さんにとって楽しんで取り組めるプログラムを作っていらっしゃいます。「その教室が終わっても、30分くらい利用者さんはホールにとどまって楽しそうに過ごしてくださっていて、楽しんでいただいているのだなと嬉しくなります。あらためて、この企画を実行してよかったと思いました。」と遠藤理事長。
その他にもホットパッドで体を温めたりフッドマッサージ器、ウォーターベッドを取り入れ心と体のリラクゼーションを提供しています。実際試させていただきましたが、ウォーターベットタイプの全身マッサージシステムは、柔らかく心地よい、「水」ならではの独特の刺激と浮遊感、温かさがありました。心地よいサービスだと思いました。
健康体操や趣味活動が盛んな
石巻市中央にある
「花水木デイサービスセンターもとまち」
花水木デイサービスセンターもとまちでは、所長の阿部和也さんが理学療法士ということもあり、健康体操や訓練などに力を入れています。お出かけやレクリエーションで、心地よく体を動かす機会を積極的につくり利用者さんの健やかな毎日を一緒に作っています。
それぞれの過ごし方をサポート!
秋田県湯沢市の
「サービス付き高齢者向け住宅この花」を運営
同法人経営の施設は秋田県湯沢市にサービス付き高齢者向け住宅「この花」があります。
自然豊かな場所で、畑で野菜を作ったりお花を育てたり、室内での趣味活動もとても盛んです。
四季折々のお出かけも利用者さんに人気だそうです。こちらの施設では、お酒を禁止されておらず、自由に楽しむことができ元気な高齢者の方がそれぞれのお部屋で楽しく暮らしています。ご兄弟で利用されている方もいて、職員の方もなごやかで、利用者さんと同じ町内会の仲間や家族のようにアットホームな雰囲気です。
石巻市鹿又の施設に隣接する
放課後児童クラブ運営も、
幸せと生きがいを理念に
同法人は、2022年の4月石巻市の放課後児童クラブの民営化に伴い鹿又地区の福祉を担う一法人として石巻市鹿又の老人福祉施設花水木に隣接する「石巻市鹿又地区放課後児童クラブ」の運営を受託することになりました。
遠藤理事長の発案で「子どもたちやご家族に喜んでいただければ」と壁面に児童たちが描いた夢のある絵画をアルミ合板に印刷し設置し、児童たちはじめ道ゆく地元の方々の目も楽しませています。一緒にお菓子作りをしたり、アーティストを招いて児童クラブの歌を一緒に作って歌うなど、子どもたちの情緒を育てる活動に尽力されています。
「子どもからご高齢の利用者さん、そして働く職員まで、幸せと生きがいをもっていただくことが私たちの願いです。」と遠藤理事長。利用する方と職員さんが幸せな気持ちになるアイデアはまた、さらに生まれていくことでしょう。
当時、若くして施設長に就任
女性の施設長は少なく、葛藤も
遠藤理事長は、平成12年介護保険制度がスタートした頃に事務員として入職しました。平成17年に花水木の施設長の任に付き、平成27年には同法人の理事長にも就任し、日々業務と真摯に向き合っています。
高校時代はテニス部に所属し、成人してお子さんが生まれてからの子育て時代には、家庭バレーボールチームでは、まるでアタックNo.1のように、やるからには本気でと、全力で体を鍛えながら挑戦したそう。女性で4つの施設を運営する底力とバイタリティの秘密をお聞きするうちに、たどり着いた一つはそれらスポーツでした。体を鍛え練習を繰り返し「努力は絶対に裏切らない」こと、〝チャンスボール〟は偶然ではなく、しっかり待って〝スタンバイ〟することなどが、仕事に生きていると言います。
母校の校是
「甲斐ある人と いわれなむ」
遠藤理事長は、母校、宮城県石巻女子高等学校(現:好文館高等学校)の校是「甲斐ある人といわれなむ」といういう言葉を大切に、早稲田大学ではバイオエシックス(生命倫理)のゼミで、如何に生きるかを研究。真心をもって世のため人のために尽くす人になるように日々努力を続けてきました。
遠藤理事長が尊敬する方の一人は、第二次世界大戦時カウナス領事館に赴任していた領事官 杉原千畝( すぎはらちうね) さんだそう。ナチス・ドイツの迫害から逃れようとするユダヤ系難民へのビザ発給の判断について、外務省の訓命に反して「命のビザ」を発給し、約6,000人の命を助けた人。そして2人目は、生命倫理学会の会長であり、上智大学名誉教授の故アルフォンス・デーケン先生。デーケン先生は、誰にでも等しく訪れる「死」という現実に向き合い、積極的に受け入れることで、よき「生」につなげる「死への準備教育(デス・エデュケーション)」と、「死生学(タナトロジー)」を日本に初めて紹介し、普及につとめたドイツ生まれの哲学者。
石巻の町が東日本大震災から復旧復興する中、地元の人々は前を向こうと頑張っていましたが肉親と死別した悲しみ、ふるさとが壊滅した悲しみが深く、遠藤理事長は〝その心を助けるためにどうしたらよいのか知りたい〟と願っていたところ、デーケン先生の本に出会いました。
「石巻の人々のために…どうにか役にたちたい」デーケン先生から直接学びたいと思い講義を受けるために東京へ通いました。
日本ではかつて〝癌の告知は行わない〟と厚生省で強硬に反対されていた中で、デーケン先生は生涯を通じて、日本の生死観のタブーに切り込み、告知の推進、癌などによって死期が迫っている人々のための緩和ケアの施設(ホスピス)、より良い生を送るための支援活動・講演活動に熱心に取り組んでいた方だそう。
遠藤理事長は、高齢者の人生に関わる仕事をする中でデーケン先生からの学びがとても必要なことだと感じ、学びを深めていきました。
そして経験と学びをいかして「世の中の役に立つ人間になる。できるだけ多くの人を助けたい。一人ひとりのことを思い、その人のために考え行動したい。」という思いをもって日々仕事に向き合っていらっしゃいます。
地域支援、外国人雇用
人と人とを繋ぎ
「夢を必ずつかむ」努力を怠らない
今課題とされていることは、フレイル予防、地域支援、外国人雇用などをはじめ、職員の幸せと児童たちの幸せ。「自分の目の前にいる人は1人でも、その後ろには家庭があり、家族がいたり状況は様々で、その都度何が幸せなのかを考え提案しています。介護をしながら仕事をしている利用者さんのご家族、育児をしながら頑張っているひとり親家庭の職員、外国からいらっしゃった方など、様々です。その中でも出会うことができたご縁を大切に、役目だと思い一緒に夢を叶えていきたいと思っています。」と遠藤理事長。ロシア対ウクライナの戦争で避難してきたイリナさん親子とも偶然の出会いが重なり同法人で深い関わりがはじまったそう。同法人の経営理念〝私達は、利用者様を心から愛し、その幸せと生きがいのために支援することが喜びです。地域にとってなくてはならない必要な最高な施設作りに研鑑を重ね、努力をして参ります〟のとおり、様々な方にとって無くてはならない存在であり、これからも地元の方に安心と生きがいをもたらしてくれることでしょう。
文・写真:上野恵美
社会福祉法人一視同仁会
〒986-1111
宮城県石巻市鹿又字八幡前15番
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