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2026.03.17


PICK&UP No.65 「ブルーインパルスの空へ」 渡部 将伍 監督



ドキュメンタリー映画「ブルーインパルスの空へ」は「TBS ドキュメンタリー映画祭 2026」出品作品として、東京、大阪、名古屋、京都、福岡、札幌の全国6都市にて順次開催中 ©TBS

今回は、MOOKSの東松島市にある航空自衛隊松島基地も撮影場所となったドキュメンタリー映画を制作した渡部将伍監督を取材させていただきました。


カメラを止めずリアルな
空気感を撮りたかった

渡部将伍監督 ©TBS

渡部監督は福島県出身。TBSへ入社後、TBSテレビの朝の情報番組のADを経験し、夕方の報道番組や報道特番などでディレクター、演出補佐を務めてきました。現在はテレビ報道局政治部・防衛省担当キャップとして、国内外を問わず数多くの事件・事故・災害・調査報道取材にあたっています。コロナ禍で奮闘する全国の高校生らの奮闘を追った特集で日本映像事業協会・ヤングクリエイター賞の優秀賞を受賞。当事者の声に寄り添い、体当たりで報道記者として奮闘しています。

「映画を撮ろうと思って撮った訳ではない」
渡部監督がブルーインパルスを
題材に映画を作った理由

あるとき、同僚から「大阪万博で飛ぶブルーインパルスを撮ってみたい」という相談を受けたことが、この取材のきっかけだったそうです。政治部で記者として防衛省を担当していた渡部監督は、航空自衛隊に取材を提案。こうして取材がスタートしました。取材を重ねるうちに、航空自衛隊のアクロバ
ット飛行チーム「ブルーインパルス」の魅力に強く引き込まれていきます。
華やかな飛行の裏側にある緻密な訓練や、大阪万博のフライトと忘れもしないいたたまれないT-4航空機の事故など、実際に目の当たりにする出来事をまさにカメラを止めない勢いで収めていったのでした。
テレビの特集番組という枠には収まりきらないのではないかと感じるようになった矢先、TBSドキュメンタリー映画祭への出品の話が舞い込みます。
そこで、この取材を一本のドキュメンタリー作品として世に送り出すことを決めたのでした。
偶然のきっかけから始まった取材は、やがて映画というかたちへと発展していきます。そこには、空を舞うブルーインパルスの姿だけでなく、その裏側にある人間の物語がしっかりと刻まれています。

©TBS
©TBS

インタビューをしていく中で、報道記者として真実を冷静に見つめ続けてきた渡部監督ならではの視点があるように感じられました。
インタビューを通して伝わってきたのは、被写体とまっすぐ向き合い、同じ目線に立ちながら信頼関係を築き、その人の本心をカメラに収めさせてもらうという、誠実で謙虚な姿勢でした。決して一方的に撮るのではなく、「撮らせていただく」という意識が、渡部監督の言葉の端々からにじみ出ていたのです。

©TBS

どんな事にも当事者がいる
当事者をきちんと大切にする
仕事がしたい

渡部監督のキャリアは、朝の情報番組のAD(アシスタントディレクター)から始まります。その後ディレクターへと昇進し、さまざまな現場を経験してきました。とりわけ大きな転機となったのが、新型コロナウイルスの流行下での取材でした。感染拡大により病院での面会がかなわず、大切な家族を看取ることもできないまま失った人々の声を取材するなかで、胸の内を打ち明けてもらったり、後日手紙を受け取ったりすることもあったといいます。そうした経験を通して、渡部監督の中で強くなっていったのが、「報道の意義 」や「ニュースの本質」を大切にしたいという思いでした。「どんな事件や事故にも、必ず当事者がいる」。そして、「その当事者に寄り添う報道をしたい」。
当事者をきちんと大切にする仕事がしたい――。
そんな思いから、渡部監督は報道記者としての道を志しました。現在は政治部に所属し、防衛省を担当しています。そして、その取材の延長線上で出会ったのが、航空自衛隊のアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」でした。
偶然のようでいて、これまでの歩みの先にあった出会い。渡部監督の眼差しの先にあった「ブルーインパルスの空へ」をぜひ劇場でご覧ください。
きっとそこには、今まで見たことのないブルーインパルスやパイロットの方々を感じることができると思います。

©TBS

ブルーインパルスのパイロットは
頑張ったからなれるわけではない

本作で渡部監督が作品の主軸として密着したのは、大阪・吹田市出身のブルーインパルスのパイロット、松浦翔矢一等空尉です。作品の中では、15歳の頃からブルーインパルスのパイロットを志してきた松浦一尉の歩みが描かれます。本作は、その夢をつかむまでの葛藤や努力も描いています。ブルーインパルスのパイロットになるためには、高い技術と豊富な経験が求められます。しかし、それだけでは選ばれるとは限りません。いくら技量が高くても適切な任期のタイミングも重要で、誰にでもそのチャンスは巡ってくるわけではありません。
まさに一瞬の機会にかける、刹那的ともいえる夢の世界です。だからこそ、その夢に全力で向き合う松浦一尉のひたむきな姿と、まっすぐな眼差しが強く印象に残ります。

また、作品の中で登場する人々が、誰もが驚くほど自然な表情を見せているのも印象的でした。カメラの存在を感じさせない空気感は、渡部監督の撮影スタイルによるものだといいます。撮影の際に「スタート」と声をかけてカメラを回すのではなく、常にカメラを回し続け、日常の流れの中で被写体を見つめ続ける。そうした姿勢と、時間をかけて築かれた信頼関係の積み重ねがあったからこそ、貴重で生きた映像が記録されたのでしょう。
画面に映るのは、作られた姿ではなく、その瞬間を生きる人の姿。そのリアルさこそが、本作の大きな魅力のひとつとなっています。

©TBS
©TBS

渡部監督の言う「普通の人」
その言葉には全普通人類への
夢と希望がつまっている

この作品が、できるだけ多くの人のもとへ届くことを願っています。
渡部監督の言葉を借りれば、「普通の人が、普通ではない努力を重ねて成し遂げる素晴らしいこと」。その姿が、この作品には確かに描かれています。
特別な誰かの物語ではなく、私たちと同じ「普通の人」が、並々ならぬ努力を重ねてたどり着く世界。だからこそ、その輝きはよりリアルで、心に強く響くのだと思います。
ぜひ、この物語をたくさんの可能性を秘めている〝全普通人類〟に見ていただきたい。そう願わずにはいられません。
ぜひ劇場でご覧ください!

©TBS

「TBSドキュメンタリー映画祭2026」
全国6都市にて順次開催

写真:TBS様より支給 文:上野恵美

「TBSドキュメンタリー映画祭2026」
全国6都市にて順次開催中

『ブルーインパルスの空へ』上映スケジュール

【東京:ヒューマントラストシネマ渋谷】
・3/16(月)16:00
・3/17(火)18:00
・3/21(土)14:00 舞台挨拶あり/16:30 舞台挨拶あり
・3/25(水)18:00
・3/26(木)14:30
・3/30(月)14:15
【大阪:テアトル梅田】
・3/28(土)14:30
・4/4(土)12:15 舞台挨拶あり/14:30 舞台挨拶あり
【名古屋:センチュリーシネマ】
・3/29(日)13:00 舞台挨拶あり
・3/30(月)12:25
・4/1(水)15:45
・4/4(土)11:00
・4/5(日)12:40
・4/7(火)12:40
【京都:アップリンク京都】
・3/29(日)12:20
・4/1(水)14:00
・4/3(金)14:00
【福岡:キノシネマ天神】
・4/3(金)14:10
・4/9(木)14:10
・4/12(日)14:10
★札幌会場の上映スケジュールは劇場公式サイト・映画祭公式サイトをご確認ください

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