PICK&UP No.33 株式会社宮富士工業 -石巻市-
(全5回・第2回目)
突如出現!あのタンクはなんだろう!?
宮富士工業の “タンク製造” の裏側に迫る!
石巻市門脇明神に突如現れた、大きくて白いタンクを知っていますか?
このタンクが完成したのは 2022年11月16日。「いつの間にかタンクができていた」と感じる方も多いのではないでしょうか。
それもそのはず。このタンク、あっという間に完成したものなんです。大きなタンクを丁寧に、早く、正確に作るためには、腕のいい職人が必要です。「どんな人たちが、何のために、どのようにこのタンクを作ったのか」を知るべく、タンクを製造した株式会社宮富士工業(石巻市)の社長 後藤春雄さん (以下「後藤社長」) にお話を伺いました。
▶宮富士工業の会社の歴史はこちら
何のためのタンク?
明神新橋の近くに位置するこのタンク、実は吉澤石灰工業株式会社(栃木県佐野市)の所有する「石灰貯蓄タンク」と呼ばれるもので、中には大量の石灰が保管されています。
石灰は、紙を作る際に着色するために必要な原料として使用されます。身の周りで使われているのは ”白い紙” が多いですよね。紙の製造工程にもいろいろな種類がありますが、その中でも カタログなどに使われるきれいな紙を作る際は、石灰の粉と粘土をまぜたものが紙の表面に薄くおしろいのように塗られているそうです。
これまでは、石巻市に石灰を貯蓄することができる場所がなかったため、栃木県で採鉱された石灰を石巻市の製紙工場まで都度トラックで輸送していたそうです。輸送作業の効率化を図るべく、2022年2月に「栃木と製紙工場の間に “石灰輸送の中継基地” を作ろう」となったことから、宮富士工業の石灰貯蓄タンク製造が始まりました。
タンクってどうやってつくるんだろう?
今回宮富士工業が製造した石灰貯蓄タンクの大きさは、高さ約30m、幅約8m。作ると決まってからは、すごいスピードで施工が進んでいったそうです。この大きさのタンクははたしてどのように作られたのでしょうか。
先ほど説明したとおり、タンクを作ることになったのは 2022年の2月。基本設計・製作図設計完了8
月。工場製作から現地建方完了まで 2.5か月。大きな構造物を作るにはあまりにも短い期間だと感じた
ので、どのような行程で作業が進んだのか、後藤社長に聞いてみました。
▼タンクの製造工程はこちら
2022年
2月 | タンク製造が決定、設計開始 |
9月 | 宮富士工業工場にて鉄板加工 |
10月14日 | 工場で加工した鉄板を実際に建設する現場にも移動させ、組立 |
11月16日 | 組み立て完了、タンク完成、竣工式(実質 28日) |
12月 | 運用開始 |
2月 | タンク製造が決定、設計開始 |
9月 | 宮富士工業工場にて鉄板加工 |
10月14日 | 工場で加工した鉄板を実際に建設する現場にも移動させ、組立 |
11月16日 | 組み立て完了、タンク完成、竣工式(実質 28日) |
12月 | 運用開始 |
タンクを作ることが決まり、まず着手したのは製造には不可欠である “設計”。建物の完成をイメージし、素材の長さや鉄を曲げる角度などを数値化した設計図がなければ、構造物を完成させることは出来ません。「設計って難しいですか?」という問いに対して、後藤社長は「図面を書くことは学校で学ぶことができる。でも “図面を見て、構造を理解して、現場で実施する” っていうことは、図面書きと違って学校で教えてもらうわけでもないから。ひたすら先輩職人の技術を盗み見しながら覚えたね。実は図面を書くことより、それを理解して作ることの方が難しいんだよ。」と語ります。
あらゆる形を作り出す、職人の技
9月に入り、宮富士工業の工場では、設計図を基に各パーツの加工作業が進められました。タンクの側面部分となるのは、16㎜~9㎜ もの厚さがある大きな一枚もの鉄板です。これらを細かく調整しながら 、機械を使って均等かつ綺麗な湾曲にしていきます。実はこの “鉄板を曲げる” という作業はとても難しいのだそう。宮富士工業の職人技が光ります。
これらの部品を工場で作り現地に運び入れたら、いよいよ組み立てが行われます。足場を作り、その中に鉄板を持っていき、どんどん繋ぎ合わせていくことで、一枚の鉄板が円錐の建物へと姿を変えていきます。通常のタンク製造では、下から順に組み立てはじめ、完成まで上に積み上げていく手法が用いられますが、今回宮富士工業は時間のない中でタンクを完成させるべく、約15m の高さのタンクを二つ同時に作りはじめ、それらを合体させるという方法でタンク製造が進められました。
ついに合体!二つが一つになる瞬間
二つのタンクが完成した 11月、ついにそれらを合体させるときが来ました。片方を持ち上げ、もう片方の上に乗せる作業が行われます。このように聞くと難しくなさそうに感じますが、タンクの周りには作業用の足場が外側と内側の両方に設置されているため、慎重にタンクを持ち上げなければ、タンクが足場にひっかかってしまい、足場が崩れてしまう可能性があります。後藤社長は「タンクが足場に引っ掛からないように、みんなで両側からすがりつくように抑えながら支えて、ゆっくりクレーンで持ち上げていくんだ。2時間くらい かけて合体したね。」とその当時の様子を教えてくれました。
技術を身に着け、それをさらに磨き上げていくことで、日本のものづくりはどんどん発展してきましたが、近年ではこのような施工をやれる会社は年々減ってきているそう。後藤社長は「石巻でもこういう仕事をやれる会社が少なくなってきた。図面を理解して、それらを作りあげていく、それをできる人を育成していかなければならない。そのための種まきをしていく必要があると思うんだ」と今後を見据えます。実はこれまでも人材育成に力をいれてきた後藤社長。その取り組みについても、近々MOOKS PICK&UP にてご紹介したいと思います。
宮富士工業の施工事例や業務内容をもっと知りたい方は、ぜひ会社の歴史またはホームページをご覧ください。
写真:一部同社提供 写真・文:酒井志帆
株式会社宮富士工業
〒986-0855
宮城県石巻市大街道東二丁目14番15号
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